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コラム
2018年1月25日

多感覚インタラクション技術と応用

NICT脳情報通信融合研究センター  脳機能解析研究室副室長 安藤広志さんに聞く

NICT脳情報通信融合研究センター 脳機能解析研究室副室長 安藤広志さんに聞く

新手の“さわりかた”が、未来を変える

「展示物には触れないでください」。美術館や博物館でよく見る注意書きだ。

近未来、これが「展示物に触れたい方はコチラ」と、さながらホームページ上のリンクボタンのような案内に変わるかもしれない。

けいはんな学研都市にある国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)が開発した「多感覚インタラクション技術」とは、触ってはいけないもの、触れないはずのものを、リアルに触っている感覚を得ることができる装置である。何百年も前から伝わる工芸品、たとえば、表面に精緻な彫刻が施されたレリーフ。触るどころか、博物館の収蔵庫から出てくることすら稀であるような国宝級のシロモノだとすれば、 一般人はもちろん、学芸員でも研究者でも安易に触るべきではなかろう。しかしこの装置により、ほんとうに触っているかのような感触がもたらされるのである。

パソコンの前に置かれたタブレットペンを持つ。画面に映し出されたその対象物をのぞきこみながら、“触りたい”箇所にペン先を近づける。もちろん、ペン先が動いているのは、自分とパソコンの間の“何もない”空間の中である。ペン先が対象物に“当たる”。ガリッ、ゴリッ、キーーーーと音がする。空気中にもかかわらず、対象物に当たるとそれ以上動かなくなる。表面にペン先を走らせると、その凹凸が実にリアルに再現されている。対象が金属ならば固く、風船ならば押すとゴムの弾力がペン先に跳ね返ってくる。さらに押すと…、風船が割れる。

技術的な仕組みを詳述するには紙幅が足りないが、「立体物スキャン」で凹凸情報を得、そこに材質情報を加味することで可能になるのだ。実社会への有用な応用可能性としては、博物館での文化財触覚体験はもちろん、手術前シミュレーション、インターネットショッピングの際の手触り確認など、想像に難くない。

開発を主導した安藤広志さんは言う。「この技術、京都で生まれたのは偶然じゃないと思います。京都には、“触りたい”衝動に駆られるものがたくさんありますし、文化や伝統を守るだけじゃなく、そこに新しいものを付加していくマインドを持った人もいて、そういう環境もあった。私はこれまで、人間の知覚の研究をしてきましたが、今回の技術開発を通して見えてきたものは、日本の文化というのは五感をフルに活用して享受すべきものばかりだということ。技術と文化財という新旧をうまくつなぐのは、日本人の得意中の得意分野なんでしょうね」。

多感覚インタラクションシステムの体験風景
ペン先が動いているのは、“何もない”空間の中だが、
あたかもゴム風船をペンで突いているかのような感触
国の重要文化財に指定されている、高松塚古墳から出土した銅鏡「海獣葡萄鏡
(奈良文化財研究所蔵)
「海獣葡萄鏡」を再現したもの

出典:『京都文化力プロジェクト2016-2020 機関誌 vol.1』「五感で知る、京都。」

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