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コラム
2017年10月23日

花街と三味線

今井三絃店五代目当主 今井伸治さんに聞く

“ひとりオーケストラ”が聴こえる

花街を歩くと聞こえてくるのは、舞妓さんのおこぼが石畳を鳴らす「カラン、コロン」という音。そして、お茶屋から漏れてくる三味線の音色である。

三味線は、琉球(沖縄)から伝わった三線(さんしん)を日本風に改良した楽器で、3本の糸(弦)を撥(ばち)で弾くと弦の振動が胴に共鳴し、よく響く大きな音が出る。江戸時代になり、舞台や民俗芸能において雰囲気を盛り上げる楽器として広く親しまれるようになった。

花街と三味線とは、切っても切れない縁にある。各花街で開催される舞踊公演では三味線の演奏が欠かせず、またお座敷での舞の披露やお座敷遊びの 際には場を盛り上げるBGMとなる。そして、芸妓さんには舞踏を主にする立方(たちかた)と、歌や語りを行い三味線を弾く地方(じかた)がいて、後者には三味線は必需品である。

さて、文字で音を表現するのはたいへん難しいのであるが、三味線の音色は非常に力強い。ピンと張った糸(弦)から繰り出されるエネルギーのようなものを感じる。そして、力強さの中に、日本人の感性に合ったデリケートでやさしい趣もある。糸が絹製と聞いてその両面に合点がいくわけである。

良い音を出すためには、三味線の素材や造りがすべてであることは想像に難くない。秀吉とねねゆかりの高台寺のほど近く、今井三絃店は明治末期の創業、現当主・今井伸治さんで五代目になる。三味線の製作は一般的に分業制を敷くケースが多いが、こちらは全工程の作業に加え、販売までも行っている。電子楽器全盛の現代であるが、こういう完全なるアナログ楽器は、職人の優れた技術なくして、絶対に良いものは作ることができない。三味線は、皮の質と張りの技術でほぼ音が決まるといって良い。弦と皮の適切な共鳴、そのためには表面と裏面の皮の厚さや張りの強さのバランスを最良にしながら、“いかに強く張れるか”がポイントであり、そこに熟練を要するのだ。

三味線の歴史を振り返れば、江戸時代の「地歌」が三味線の最初の芸能であり、その後、語り芸である浄瑠璃で使われる。つまり、「歌いもの」「語りもの」という2つの流れで分化しながら発展し、民謡から流行歌、そして芸術性の高い音楽まで、さまざまな場面で使われてきた。いわば、近世の邦楽においては日本を代表する弦楽器でありつづけてきたのだ。今井さんは言う。「三味線は、ひとりオーケストラと言われます。喜怒哀楽、花鳥風月、春夏秋冬といったものをすべて、一丁(ちょう)の三味線で表現するのです」。

今日も、明日も、10年後も1世紀後も、京の街にその音色が流れ続け、人々の心に日本の風情を届けてほしいものである。

祇園甲部の舞踊公演「都をどり」より
最も重要な皮張りの作業をする今井さん。
均一なバランスを出すことに細心の注意を払う
左から、上竿、中竿、下竿(=胴)のパーツに三味線を分割した状態
中竿の接着部分の拡大。上等な紅木には、このようにきれいな縞模様が入っている。また、接着部分にこのように2本の溝があったり、筒状の金を埋め込んでいたりするのは、ガタついたりせずにしっくりとはまるためであり、上等な三味線でしか見られない構造である

出典:『京都文化力プロジェクト2016-2020 機関誌 vol.1』「五感で知る、京都。」

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