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コラム
2019年4月23日

漆芸家 笹井 史恵さん

漆芸家 笹井 史恵さん

ささい・ふみえ

大阪府生まれ。1996年京都市立芸術大学美術学部工芸科卒業、98年同大学院美術研究科漆工専攻修了。2003~05年ポーラ美術振興財団・ユニオン造形文化財団在外研修生としてタイに派遣。独特のフォルムと漆の艶を駆使した造形作品で08年京都工芸美術作家協会展第30回記念賞、14年京都市芸術新人賞、15年京都府文化賞奨励賞など受賞し注目を集める。京都市立芸術大学准教授。

伝統の技が斬新なアートになる街

立体的な造形物を創りたい

大阪での高校時代は、油絵を描いていました。でも、枠の中に納めるというのが苦手で、立体的、造形的なものが向いていると思い、大学では陶芸を学ぼうと。そして、何となく「京都でろくろ」というイメージがよくて、京都市立芸術大学に入りました。工芸科では、1回生の後期は京都の伝統工芸を代表する陶磁器、漆工、染織を一通りやり、2回生から専攻を決めます。陶芸を目指して入学したものの、焼いて作品が縮むというのが何となく寂しい。化学的なこともちょっと苦手だったんですね。また、作品を「火の神様」に委ねなければいけないというのも、どうも自分向きではない。その中で、これならと思ったのが漆工でした。塗っては研ぎ、研いでは塗るを何回も繰り返し、最後までゆっくりボリュームアップさせながら形を作っていく作業が自分には合っていると。

京都で出会った新しい漆芸と伝統の技

そうして漆工を選んだものの、ほとんど知識がなく、お椀とか蒔絵(まきえ)のイメージくらいしかなかったんです。ところが、実際は伝統工芸のイメージとは大違い。例えば、栗本夏樹先生(京都市立芸大教授)や先輩たちは、造形的でずいぶん新しい漆芸をされている。これには大変刺激を受けました。同時に、主に漆を使って文化財などの復元を行う有名な工房でアルバイトをすることもできました。お寺や神社に行って剥落止めを施したり、解体して工房に運び込まれた漆塗りの柱を塗り直したりする作業です。この時に、職人さんたちの錬磨した仕事ぶりに接し、ずいぶん漆のことや伝統的な技術に関して勉強ができました。こういう機会があるのは、さすが京都だなと思います。

独創のテーマ、独創のフォルム

漆は樹液、生き物なんですよ。漆と会話をしながら、機嫌を損ねないよう下地をつけていく。これが何とも言えない漆の仕事の魅力ですね。漆の制作は特に研ぎが大変で、本当に根気がいりますが、作品ができあがった時の喜びは何ものにも代えがたい。この魅力と喜びで続けてこられたと思っています。その上、何にでも塗ることができ、蒔絵など伝統の技法も豊富。漆芸の可能性はすごく大きいと思います。

こうした中で生まれてきたのが、丸みと稜線があやなす金魚、ふっくら丸々とした柿、折り重なる花びら…といった不思議な造形の数々。乾漆技法(かんしつぎほう ※1)で造形したフォルムと「つるつるぴかぴか」や「しっとりすべすべ」した塗りを施した私の作品は、伝統と独創を併せ持ち、誰もが思わず触りたくなるようなどこか親しみやすい魅力を持っているのではないかと思っています。

コラボで広がる新境地

5年ほど前から、他の工芸分野の人たちとコラボ作品を作るようになりました。例えば竹工芸家の四代田辺竹雲斎(※2)さんとコラボした「月の舟」は、私が乾漆技法で朱と深緑の上弦の月を表現し、田辺さんの竹細工で天空に光を放っているように見える作品です。また、截金(きりかね ※3)ガラスという独自の技法を開発した大学後輩の作家・山本茜(※4)さんとも共同制作をしていますが、こうしたコラボは一つのジャンルに閉じこもって一人で制作していたのではわからない新しい技術の発見につながります。この試みの成果は、伝統工芸にもフィードバックされ、そのすそ野を広げていくことにもつながるのではないか。今後もさらに続けていこうと思っています。

京都は、さまざまなアーティストや伝統的な職人、作家、そして漆などの素材にかかわる方たちと交流するには、ほんとにコンパクトでいいサイズの街です。京都芸大も、2023年に京都駅のすぐ近くに移転する計画で、今後ますますこうした交流がやりやすくなるのではないでしょうか。文化都市としての京都が、さらに面白さを増していくだろうと期待しているところです。

金魚(截金:山本茜) 写真:渞忠之

【※1】乾漆技法=型の上に麻布や和紙を漆で張り重ね、乾いた後、型を取り出す脱乾漆造と、漆と木粉を練り合わせたものを木彫の上に盛り上げて作る木心乾漆造が代表的技法。
【※2】四代田辺竹雲斎=1973年大阪府堺市生まれ。東京芸術大学彫刻科卒業後、竹工芸家三代竹雲斎の元で修業、2017年四代襲名。伝統的な作品を制作する一方、竹によるインスタレーション、現代的立体作品の制作で知られる。
【※3】截金=金銀などの箔や薄板を線などに細かく切り、仏像などに張り付けてさまざま模様を施す技法。
【※4】山本茜=石川県金沢市生まれ。2001年京都市立芸術大学日本画専攻卒業。重要無形文化財「截金」保持者の江里佐代子氏に伝統的截金技法を師事。ガラスの中に截金を埋め込む独創の技法を生み出す。


出典:『京都文化力プロジェクト2016-2020 機関誌 vol.3』「創造する文化 京都から世界へ」

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