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コラム
2017年12月21日

お香

香老舗  松栄堂 代表取締役社長 畑正高さんに聞く

香老舗  松栄堂 代表取締役社長 畑正高さんに聞く

歴史に紐づく香の道

京のまちを歩けば、お香の匂いが風に運ばれてくるときがある。現代においてもお香は、暮らしに欠かせないものとして、京の生活にしっかり根付いているのだ。仏事はもちろん、お茶会や就寝前のひととき、さらには匂い袋や防虫香といった生活実用品まで、さまざまな場面がある。お香から、煙がゆらゆらと薫り立つ姿はたいへん日本的である。にもかかわらず、原料となる香木は、アジアからの輸入により大半がまかなわれている。香は大陸の歴史の影響を色濃く受けつつ、海というフィルターを通し、さらには京都の平安文化、東山文化などの文化の中で洗練され、昇華されていったのである。

宝永2(1705)年創業、300年を超える歴史を持つ香の老舗・松栄堂の畑正高社長は言う。 

「奈良時代に鑑真和上が、仏教の戒律とともに多くの香薬と技術を伝承しました。そこから香りの種類や幅が広まり、“香り”の門が生活の楽しみとして開かれていったのです。仏教において、焚いた香の香りは不浄を払い、心を清らかにする供養に欠かせないものです。私たちはその歴史を学び、現代の社会に果たす香の役割を考えなければいけません」。 

平安時代になると、香料を複雑に練り合わせ香気を楽しむ「薫物」が貴族の間で流行りはじめる。自ら調合し、自分だけの香りに仕立てた薫物で、部屋や衣服への「移香」を楽しんだようで、その頃の書物には香の記述が頻出する。 

そして鎌倉時代、禅宗の広まりにより、香木そのものと向き合い一木の香りをきわめようとする精神性が尊ばれるようになる。さらに、武家の台頭により、戦乱の世となった室町時代になると、香木の香りを繊細に鑑賞する「聞香(もんこう)」の方法が確立する。文化の中心であった京都の地では、茶の湯や立花など多様な芸術が花開き、現代にも通ずる日本文化の礎がつくられる。香においても、香料を配合する世界と香木そのものを見つめる世界、その2つを総合的に使いこなせるようになったのが安土桃山の時代だ。香りに 名をつけて表現するなど、今日の香道の元となる文化が生まれたのもこの時代である。 

経済力をもった町人にも香文化が広まる江戸時代、歴史の檜舞台は江戸に移れども、文化の中心は依然として京都にあった。畑さんは言う。 

「大陸からの文化を受けとめ、発展させてきたノウハウは京都にしかありませんでした。政治の中心が鎌倉や江戸に移っても、文化を遡ると京都に学ばざるを得ない。それはひとえに、歴史 の中に、学び、積み重ね、伝承された知恵があるからにほかなりません」。 

さらに付け加えた言葉には、京都に根を張って活動を続ける志がこもる。「遡れる歴史と伝統を持つ京都人が、未来に向け責任のある一歩を踏み込もうとするときに、歴史を遡る意識をどれだけ持てるかどうか。次代の人々とともに追い続けたいと思います」。

江戸時代から伝わる調合帳。「歴史に学ぶ」 ための資料が京都には多い 
良質な香木はすべて東南アジア産
昔ながらの製法そのままに、職人たちが織りなす伝統の技
お香の原料として使用される天然香料

出典:『京都文化力プロジェクト2016-2020 機関誌 vol.1』「五感で知る、京都。」

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