2018年6月から9月まで、都市における空間を大胆かつ想像力豊かに活用し自由な発想で体験できるインスタレーションを募集しました。日本を含め14 カ国から111 件の応募があり、その中から、ユージン・ソレール氏の「Kyoto Urban Wind Installation」を大賞に選出しました。
建築家。1977 年、フィリピン、マニラに生まれる。オーストラリア、パプアニューギニア、スウェーデンで教育を受ける。2003 年、ニューキャッスル大学(オーストラリア) 建築学部を最優秀の成績で卒業。2005 年、隈研吾建築都市設計事務所、坂茂建築設計にてインターンシップを経験。2010 年、ロンドンで建築家として働く傍ら、AAスクール(ロンドン)空間パフォーマンス・デザインコースを卒業。その後、オーストラリア、ロンドン、日本に拠点をおきながら、世界各地で活動を続ける。主な受賞歴として、第44 回セントラル硝子国際建築設計競技最優秀賞(審査員:隈研吾、伊東豊雄 他)。2018 年には、奈良で開催された「ならまち遊歩」にて、インスタレーション作品「ならまちプロジェクション」を発表した。現在は奈良市在住。
全体的に、意欲的で挑戦的な作品が数多く見られた。なかでも、わずかな風の動きで繊細な動きを見せ、音を聞かせるユージン・ソレール氏によるインスタレーションのアイデアが目を引いた。風で動く彫刻は他の案にも見られたが、嵐山の竹林にインスピレーションを得たというこの案は、鑑賞者の五感全てに訴えようとする意欲が随所に感じられた。
京都の都市環境の中に、その地に相応しい自然の素材で、動きや音に抽象化された自然環境(提案者は「自然の声」と称している)を再現しようという試みは、京都文化力プロジェクトの主旨にも相応しいものと考えた。
京都の文化力を象徴するものとして、日本の伝統文化や京都の自然観を特定の屋外空間でどのように表象するかという課題に挑戦した提案が多く見られた。優秀賞に選ばれたユージン・ソレール氏の提案はコンセプトとその具体的な視覚化、想定される観客の体験が美しく均衡したもので、嵐山の自然環境が凝縮された風や音など、五感に訴える要素も評価した。その他、都市生活と祝祭性を融合したブノワ・モーブリー氏のスピーカーによる彫刻、諸行無常と永遠性を表現した大松俊紀氏の天に昇る階段、既存の建物とダイナミックに関わる井口雄介氏の幾何形体の連続による円環も、コンセプトの本質が巧みに形体化・視覚化され、作品そのものに強度と存在感のある優れた提案だった。
京都文化力プロジェクトの今回の野外インスタレーションのコンペは、この古都ならではの環境が現代アーティストの挑戦意欲を掻き立てたのであろう、他府県のみならず海外からの応募も多かった。優勝賞に選ばれたユージン・ソレール氏のプランは、上に小さな鈴をつけた細い葦を密集させた大規模なインスタレーションで、無数の鈴が微風に揺れながら“ホワイト・ノイズ”を奏でるという、繊細にして不思議なエレガンスを醸し出す体験空間が出現するはずである。オーストラリアから移住し奈良に身を置くアーティストならではの発想というべきか。他にも祝祭性やモニュメントとしての造形性、建築的なユニークな構造など、注目される提案が幾つも見られた収穫の多いコンペであった。
公募では、大賞の他、以下3 点が入選に選ばれました。プランを同会場にてご紹介します。
大賞プランであるユージン・ソレール氏の「Kyoto Urban Wind Installation」を実現し展示します。
会期 |
2019年2月16日(土)~3月17日(日)10 時~17 時 |
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会場 |
旧京都府立総合資料館 前庭 |
※入場無料・会期中無休
※会期中にマルシェやトーク等、さまざまイベント実施する予定です。詳細は決まり次第お知らせします。
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